誰もが安心安全に在宅生活を過ごせる地域を守る訪問介護事業所が維持でき
ヘルパーが安心して誇りを持って働き続けられるために
訪問介護基本報酬の大幅な引き上げを求めます
社会福祉法人グリーンコープと一般社団法人グリーンコープ・ワーカーズ・コレクティブ連合会は、2025年7月24日(木)に厚生労働省を訪問し、厚生労働大臣・財務大臣に宛てた「2027年度介護報酬改定に向けた意見書」を提出しました。
当日は、グリーンコープから7名が厚生労働省 老健局 認知症施策・地域介護推進課を訪問し、吉田課長、清水課長補佐、舛井係員に対応いただきました。
冒頭、ワーカーズ連合会福祉ワーカーズ水摩委員長が意見書の内容を説明し、現場の声として、熊本たすけあいワーカーズひとつ山下理事長とびすけっと佐賀永野管理者から現状を訴えた後、社会福祉法人グリーンコープ和田在宅専務理事から「地域の中で長年在宅生活を支えてきた訪問介護事業所と地域に暮らす生活者の視点も踏まえたヘルパーからの率直な意見です。是非とも今後の報酬改定の検討材料として欲しい」と意見書と資料を手渡ししました。
吉田課長と清水課長補佐からは、「現場の想いを強く感じた」とのコメントとあわせて、「訪問介護の重要性は重々承知している」「介護の仕事を続けられるよう国民からお預かりしている大切なお金を使っての改善という観点から、訪問に限らず介護業界全体を考えないといけない」「今回いただいた意見書やアンケートを次回改定に向けて活かしていきたい」ということでした。

清水課長補佐(左)に手渡しする水摩委員長(中)と和田専務(右)
意見書の概要は次の通りです。意見書とアンケート詳細(PDF)は最下部をご覧ください。
2027年度介護報酬改定に向けた意見書
誰もが安心安全に在宅生活を過ごせる地域を守る訪問介護事業所が維持でき
ヘルパーが安心して誇りを持って働き続けられるために
訪問介護基本報酬の大幅な引き上げを求めます社会福祉法人グリーンコープ
一般社団法人グリーンコープ・ワーカーズ・コレクティブ連合会一、はじめに
私たちは、広島、山口、福岡、佐賀、長崎、大分、宮崎、熊本、鹿児島の9県で社会福祉法人グリーンコープの介護保険事業を担っている一般社団法人グリーンコープ・ワーカーズ・コレクティブ連合会の福祉ワーカーズです。
私たちは、1995年「住み慣れた地域で誰もが安心して心豊かな暮らしができる」ことをめざして、地域に助け合いの輪を広げる福祉の取り組みを始めました。そして、私たちの願いを実現するために2000年から始まった介護保険事業にも積極的に参画してきましたが、現実には介護を社会全体で支えることを目指すとは名ばかりで、改定のたびに複雑になりその結果、利用者・家族が使いにくい、また働くワーカーにとっても働きづらい制度になっています。
そのような中での2024年度の介護報酬改定は、「訪問介護従事者の処遇改善の加算率は高くした。しかし訪問介護の基本報酬は下げる。」といった、まさかの訪問介護の報酬引き下げでした。これは私たちが大切にしてきた在宅支援の現状への理解がないだけでなく、訪問介護事業の存続が危ぶまれる事態だと考えています。
今回の介護報酬改定について現場で働くワーカー・事業所から「依頼はあっても派遣できるワーカーがいない」「利用者さんが困っている」「私たちも限界にきている。事業所の存続も危ぶまれる。この声をぜひ国に届けてほしい」との悲鳴が届きました。
そこで、社会福祉法人グリーンコープと一般社団法人グリーンコープ・ワーカーズ・コレクティブ連合会では50の訪問介護事業所およびそこで働く1,000人のワーカーにアンケート調査を行い、そこから見えてきた課題をまとめました。現場の声を、事業所の声を、そしてそこから聞こえる利用者の声を意見書として以下のように届けます。二、ヘルパーが安心して誇りを持って働き続けられるために、訪問介護基本報酬の大幅な引き上げを求めます。
(1)一日も早い訪問介護基本報酬の大幅な引き上げを求めます。
一)訪問介護事業所は人材難、経営赤字、閉鎖の危機に直面しています。
二)移動時間を考慮した報酬体系を望みます。
三)危険手当(台風や大雪時など)やキャンセル時の手当の制度化を求めます。
四)生活援助サービスの対価を専門職の対価とすることを求めます。
(2) 訪問介護事業所に人材が集まり、地域福祉を支える重要な事業として継続できるような制度・環境づくりを求めます。
一)ワーカー人材不足は深刻です。
二)十分なサービス時間の確保ができていません。
三)制度上の事務手続き等の煩雑さ、実務作業の負担感の軽減を求めます。
四)在宅介護における訪問介護は必要不可欠となっています。
五)訪問ワーカーとしてのやりがいを感じています。三、おわりに
「できる限り住み慣れた地域の中で、最期まで尊厳をもって自分らしく安心して生活を送りたい」という利用者の大切な思いや願いを叶えるための、地域包括ケアシステムの構築を目指した介護保険制度の中において、訪問介護事業には利用者の自立支援、重度化防止に向けた在宅生活支援という大切な役割があります。
しかし、2024年度に改定された訪問介護事業の報酬単価の減額により、人材不足も相まって、各地では事業存続が困難になり、地域の事業所が次々に閉所に追い込まれ、必要な支援が届けられない状況が進んでいます。
訪問介護の生活援助サービスで見えてくる利用者の心や身体状況の変化を、現場のワーカーが気付き事業所に報告する事により、在宅生活を継続していく上でも必要な情報となり、状況の悪化を防ぐ早期対応に繋がります。
また、利用者の希望や想いに耳を傾け、会話の中から何を大切に守り暮らしていきたいのかを聞き取り、事業所よりケアマネジャーに伝えることで、利用者が在宅の暮らしが難しくなり施設入所となっても、その後の生き方に自分が大切にしてきた事や、これからもこうありたいという本人の望みや楽しみ、自分らしさを生活の中に取り入れ、ひいては尊厳を守ることに繋がります。
まさに訪問介護事業は「本人の思いをつなぐ支援」として重要な役割を担っていると言えます。
今回お届けする意見書は、地域の中で長年利用者の在宅生活を支えてきた訪問介護事業所と、地域に暮らす生活者としての視点も踏まえた、専門職である訪問介護員(ホームヘルパー)からの率直な意見となっています。
地域の中で高齢となっても、障がいがあっても、誰もが安心安全に在宅生活を過ごせる地域を守る訪問介護事業所が、安定して維持できるための対策を望み、上記の意見を届けます。以上